《モーツァルトのクラヴィーアのある部屋》には毎回、モーツァルトと関わりのある作曲家等をひとりずつゲストとして迎えます。 モーツァルトとゲスト作曲家のクラヴィーアのソロ作品、またピリオド楽器奏者と共にお届けする室内楽、連弾、歌曲などなど、お話を交えながらのコンサートです。 18世紀にタイムスリップしたかのようなひととき、《モーツァルトのクラヴィーアのある部屋》にみなさまをご案内いたします!
《第11回》
2014年4月14日(月)午後7時開演(開場6:30)
近江楽堂
《第11回》公演は終了しました!
〔ゲスト作曲家〕L.v.ベートーヴェン Ludwig van Beethoven [1770-1827]
小倉 貴久子(フォルテピアノ)
L.v.ベートーヴェン:
選帝侯ソナタ 第3番 ニ長調 WoO47-3/ソナタ 嬰ハ短調 Op.27-2「月光」/ソナタ 変イ長調 Op.26「葬送」
モーツァルト:
小品 ヘ長調 K.33B/幻想曲 ニ短調 K.397/ソナタ イ長調 K.331「トルコ行進曲付き」
(写真はゲネプロの様子)
〔コンサートの聴きどころ〕第11回:L.v.ベートーヴェン
ベートーヴェンの育った町ボンは、当時マクシミリアン・フランツ選帝侯の元、開化の模範と仰ぎ見られていました。大学を開き、芸術を育成することに努めた、皇帝ヨーゼフⅡ世の弟であるこの選帝侯に、ベートーヴェンは1783年に3曲から成るクラヴィーアソナタを献呈しています。22歳の誕生日を目前に帝都ウィーンへ旅経つベートーヴェンに、ヴァルトシュタイン伯爵は、「たゆみない努力によって、ハイドンの手からモーツァルトの精神を受け取るように」という言葉を贈っています。
変奏曲の第1楽章、終楽章が行進曲という、クラヴィーアソナタとしては一風変わったモーツァルトの「トルコ行進曲付きソナタ」。ベートーヴェンは、実験的ソナタを書き連ねていた1800年初頭に、このモーツァルトのイ長調ソナタに倣うかのようなソナタ「葬送」を作曲しています。そしてフォルテピアノの魅力が光るファンタジー風ソナタ「月光」。古典派音楽を代表する二人の大作曲家の出会いに焦点を当てます。
〔第11回公演報告〕
《モーツァルトのクラヴィーアのある部屋》のチクルスが再び始まりました!
初回のゲストはベートーヴェン!ウィーンの二大巨匠のクラヴィーア作品を交互に演奏しました。少年ベートーヴェンが書いた「選帝侯ソナタ」には、現代のピアノでは演奏不可能な細かなアーティキュレーションが施されていて、18世紀末の鍵盤楽器の超絶技巧のスタイルが、後のもとのは異なることだったことを再認識。ファンタジーとタイトルが付された二曲と、「変奏〜メヌエット〜行進曲〜」という形式上の類似点のある、両者のソナタ。
各々の意外な共通点と、強烈な個性とに感じ入る特別な晩になりました。
公演の模様
第11回公演の使用楽器:Klavier made by Chris Maene after Anton Walter [1795]
《第12回》
2014年6月17日(火)午後7時開演(開場6:30)
近江楽堂
《第12回》公演は終了しました!
〔ゲスト作曲家〕ルイ・エマニュエル & イアサント・ジャダン兄弟
Louis Emmanuel Jadin [1768-1853] / Hyacinthe Jadin [1776-1800]
小倉 貴久子・羽賀 美歩(クラヴィーア)
H.ジャダン:
四手のためのデュオ ヘ長調、ソナタ 変ロ長調 Op.4-1
L.E.ジャダン:四手のためのソナタ ト長調 Op.2-1
モーツァルト:
〈ナンネルの楽譜帳〉よりメヌエット ニ長調 K.7/四手のためのソナタ ハ長調 K.521/シンフォニー ト短調 K.550[四手用ウルリッヒ編曲版]
(写真はゲネプロの様子)
〔コンサートの聴きどころ〕第12回:ルイ・エマニュエル & イアサント・ジャダン兄弟
ヴェルサイユで音楽家の家系に生まれたジャダン兄弟は、二人ともクラヴィーアの演奏に秀で、兄ルイ・エマニュエルはヴァイオリンにも熟達。弟イアサントは、ヒュルマンデルに弟子入りしたこともあり、クラヴィーアの独奏や協奏曲の演奏で注目を浴びたと伝えられています。イアサントの残した作品には天才の閃きが認められ、モーツァルトからシューベルトへの道が示されています。わずか24歳での夭折が悔やまれます。一方、ルイ・エマニュエルは長寿を全うし、歌劇を始め膨大な数の作品を残しました。
第12回では、若き日の兄弟が切磋琢磨して音楽家への道を歩んでいたことを彷彿とさせる連弾作品を取り上げます。モーツァルトの連弾作品は、後期の充実したソナタK.521とト短調交響曲の連弾編曲版です。当時、このような編曲版で交響曲作品も身近に親しまれていました。5オクターブのフォルテピアノでの四手の世界は、様々な技巧の妙味と、華麗な響きが満載です。
〔第12回公演報告〕
フォルテピアノの四手?聞いたこともない作曲家!?シンフォニーの四手用編曲?
誰にも見向きもされないのでは、という心配は杞憂におわり、いつものように満場のお客様にご来場いただきました。
15歳の時にパリで自作のコンチェルトを弾いた、という逸話に残る作曲家たちにまけない経歴をもつ羽賀美歩さんは、小倉貴久子と既に10年以上に及ぶ仲。お互いを知り尽くした間柄でのデュオは、期待をはるかに超える面白いものがありました。
ジャダン兄弟の粋な作曲手腕、オーケストラに負けない緊迫感のあるシンフォニーに拍手が鳴り止みませんでした!
公演の模様
第12回公演の使用楽器:Klavier made by Chris Maene after Anton Walter [1795]
《第13回》
2014年8月5日(火)午後7時開演(開場6:30)
近江楽堂
《第13回》公演は終了しました!
〔ゲスト作曲家〕ルイージ・ボッケリーニ Luigi Boccherini [1743-1805]
小倉 貴久子(クラヴィーア)・杉田せつ子(ヴァイオリン) ・懸田 貴嗣(チェロ)
L.ボッケリーニ:
ヴァイオリン・オブリガート付きチェンバロソナタ ハ長調 G.26 作品5-2
チェロとバッソのためのソナタ ト長調 G.5 Fonda Noseda E24-13
ヴァイオリンとチェロの伴奏付きクラヴサンのためのソナタ 第6番 ト短調 G.148
モーツァルト:
ロンドンのスケッチブックより ヘ長調 K.Anh.109b Nr.1(15a)
クラヴィーアとヴァイオリンのためのソナタ ハ長調 K.303 (293c)
クラヴィーアとヴァイオリン、チェロのためのトリオ ト長調 K.496
(写真はゲネプロの様子)
〔コンサートの聴きどころ〕第13回:L.ボッケリーニ
イタリア生まれのボッケリーニは、チェロの卓越した奏者として活躍を始めました。父親と共にウィーンの宮廷オーケストラに雇われたり、生まれ故郷のルッカに職を求めた彼は、父親の没した1766年から、ヴァイオリンのマンフレーディと共に旅立ち、パリに留まり多数の演奏会を行いました。活躍の場はスペインにまで広がり、69年にはマドリードのドン・ルイス王子に仕える「宮廷ヴィルトゥオーゾ兼作曲家」として、本拠地をこの地に定めるようになります。ボッケリーニは、弦楽器のための作品を多く書き、形式を重んじた同時代のウィーン古典派とはひと味異なる作風を示しています。
ボッケリーニの超絶技巧の冴え渡るチェロソナタ、初期の作品よりヴァイオリン伴奏付きクラヴィーアソナタと、知られざる名曲クラヴィーア三重奏曲を。モーツァルトの作品からは、イタリアの陽光を思わせるヴァイオリンソナタと、爽やかでエネルギー溢れる三重奏曲をお届けします。
〔第13回公演報告〕
イタリアにも活動拠点を置くふたりの弦楽器奏者を迎えてのボッケリーニの回。
ヴァイオリンの杉田せつ子さんとのイタリアの陽光が降り注ぐようなボッケリーニのヴァイオリン伴奏付きクラヴィーアソナタ。懸田貴嗣さんの超絶技巧満載のチェロと通奏低音のためのソナタや、アンサンブルの醍醐味が味わえるモーツァルトのクラヴィーアトリオ。おふたりの愉しいお話などなど、バラエティに富んだプログラムであっという間の2時間でした。
今回も満場のお客様におこしいただきました!
「音楽の友」2014年10月号《コンサート・レビュー》
小倉貴久子(クラヴィーア)
近江楽堂という親密な雰囲気の会場を舞台に、小倉貴久子がつづけている古鍵盤楽器演奏の一環。前回はジャダン兄弟の珍しい作品を味わわせてくれたが、今回はボッケリーニとモーツァルト。ボッケリーニとなればどうしても鍵盤曲よりは弦楽だが、杉田せつ子のヴァイオリン、懸田貴嗣のチェロを招き、ソナタや三重奏曲の佳篇を紹介した。いずれもボッケリーニらしく抒情味と機知を織り交ぜた音楽で、小倉のいつもどおり垢抜けた、ヴィルトゥオーソ的な要求にも見事に応じ得る伎倆の高さが、時代の香りと相まってたいへん快い後味を残す。弦の二人も、日本におけるピリオド楽器演奏界の水準の高さを、改めて立証する出来映えだった。後半のモーツァルトは、「クラヴィーアとヴァイオリンのためのソナタ」K303(ハ長調)と、「三重奏曲」K496(ト長調)、ほか。ひんぱんに聴かれる曲ではないが、却って、「やはりモーツァルトは.....」としみじみ思わせてくれた。(8月5日・近江楽堂)〈濱田滋郎氏〉
公演の模様(L.ボッケリーニ:チェロとバッソのためのソナタ ト長調 E24-13 G.5 第1楽章)
第13回公演の使用楽器:Klavier made by Chris Maene after Anton Walter (1795)