《モーツァルトのクラヴィーアのある部屋》には毎回、モーツァルトと関わりのある作曲家等をひとりずつゲストとして迎えます。 モーツァルトとゲスト作曲家のクラヴィーアのソロ作品、またピリオド楽器奏者と共にお届けする室内楽、連弾、歌曲などなど、お話を交えながらのコンサートです。 18世紀にタイムスリップしたかのようなひととき、《モーツァルトのクラヴィーアのある部屋》にみなさまをご案内いたします!
《第1回》
〈昼の部〉2012年3月6日(火)午後2時開演(開場1:30)
〈夜の部〉2012年3月6日(火)午後7時開演(開場6:30)
近江楽堂
《第1回》公演は終了しました!
〔ゲスト作曲家〕L.A.コジェルフ Leopold Anton Kozeluch (1747-1818)
小倉 貴久子(クラヴィーア)・桐山 建志(ヴァイオリン)・花崎 薫(チェロ)
コジェルフ:
クラヴィーア三重奏曲 ト短調 Op.12-3/クラヴィーアソナタ ハ長調 Op.15-2
モーツァルト:
アレグロ ヘ長調 K.1c/幻想曲 ハ短調 K.475/クラヴィーアソナタ ハ短調 K.457/クラヴィーア三重奏曲 変ロ長調 K.502
(写真:三好 英輔)
〔コンサートの聴きどころ〕第1回:L.A.コジェルフ
1778年にウィーンに移住したコジェルフは、フリーの音楽家として活躍し、大変な人気がありました。3年後にウィーンに移住して来たモーツァルトと互いに影響を与え合ったことは間違いないでしょう。コジェルフは当時のあらゆるジャンルの作品に筆を染めていますが、創作活動の中心はクラヴィーア音楽でした。独奏曲から室内楽作品まで、ウィーン・ロココのギャラントの作風や、ベートーヴェンの音楽を予感させるようなドラマティックな作風など、さまざまな魅力に溢れた独創的な作品を多く残しています。 モーツァルトの死後の1792年にはウィーンの宮廷作曲家に任命されています。コジェルフの三重奏曲 ト短調は、モーツァルトの同じ調のクラヴィーア四重奏曲にも匹敵するほどのすばらしい名曲です。数あるソナタも、今後ポピューラーになってゆくべき作品で、 ベーレンライター社からコジェルフ・クラヴィーアソナタ全集(C.ホグウッド編)が近年続々と出版されるなど、再び脚光を浴びています。
〔第1回公演報告〕
シリーズ初回に迎えた作曲家ゲストは、小倉貴久子が特別に愛するコジェルフ。
アンサンブルの仲間もこれまで数多くのステージやレコーディングで気心の知れた、桐山さんと花崎さん。
傑作揃いのコジェルフの室内楽からソナタと三重奏曲を演奏しましたが、その名さえ知らなかったというお客様からは驚きの声が上がりました。モーツァルトの作品は、ハ短調の幻想曲とソナタ、コジェルフの三重奏曲と同じ年に作曲された三重奏曲という大曲を一気に聴いていただきました。
〔当日のアンケートより〕
・コジェルフは初めて聴きましたが、躍動感のある素晴らしい曲で感動しました。
・得難い機会です。今後も皆勤賞を目指します。
・会場のコンパクトさもあって、音楽との一体感がすばらしかったです。フォルテピアノの音に酔いしれました。後半はガラッと変わって迫力のアンサンブル。プログラミングも脱帽です。
・pfの音がとてもきれいでした。上から下までよくひびいていました。コジェルフ初めて聞きました。トリオの余音がきれいに耳に残っています。
・この会場は初めてでした。繊細な音の変化がよくわかります。コジェルフのはつらつとしたリズムとメロディーに魅力を感じました。モーツァルトも実に素晴らしかった。直に心に響きました。本当にぜいたくな音楽鑑賞だったなーと楽しさ何倍もの気持でした。
・素晴らしい演奏で、ホールの音響もよいし聴き応えがありました。コジェルフはベートーヴェンのようなドラマティックな音楽でとても面白かったです。
・初めて聴かせていただいたコジェルフの作品はとてもチャーミングでした。なぜ彼の曲は現代、(忘れさられ)演奏される機会がないのでしょうか?小倉さんの企画に大拍手を送りたいと思います。
「モーストリー・クラシック」2012年5月号 vol.180
《NONFICTION 〜アーティストたちの鼓動[49]》に『モーツァルトのクラヴィーアのある部屋』第1回の模様が3ページにわたり紹介されました!
〜(前略)〜。今日のコンサートは、このフォルテピアノの日本屈指の演奏家である、小倉貴久子の演奏会。いわゆる「古楽系」の演奏会だ。古楽のコンサートというと、アカデミックで真面目なイメージが、いまだにある。ところが入り口で渡されたプログラムはピンク色で、「小倉貴久子のモーツァルトのクラヴィーアのある部屋」という柔らかめな公演名が、ポップな書体で記されている。このかわいらしさは、いったいなんなのだろう。
〜(後略)〜
「東京人」2012年5月号 no.309
東京つれづれ日誌 [23] 川本三郎・文 にも第1回公演の模様が紹介されました!
第1回公演の使用楽器:Klavier made by Chris Maene after Anton Walter (1795)
《第2回》
2012年5月22日(火)午後7時開演(開場6:30)
近江楽堂
《第2回》公演は終了しました!
〔ゲスト作曲家〕J.ハイドン Joseph Haydn (1732-1809)
小倉 貴久子(クラヴィーア)
J.ハイドン:
12の変奏曲 変ホ長調 Hob.17:3/クラヴィーアソナタ ロ短調 Hob.16:32/《イギリス・ソナタ》ハ長調 Hob.16:50
モーツァルト:
メヌエット ヘ長調 K.2/クラヴィーアソナタ ヘ長調 K.280/クラヴィーアソナタ イ短調 K.310
〔コンサートの聴きどころ〕第2回:J.ハイドン
モーツァルトとハイドンは年齢にも性格にも大きな違いがありましたが、互いに敬い、惹きつけられ合う仲でした。「戯れたり、興奮させたり、笑いをひきおこしたり、深い感動をあたえる、といったようなすべてのことを、ハイドンほどうまくできる人はだれもいません。(大宮真琴・訳)」 モーツァルトはハイドンの音楽についてこのように書いています。 ハイドンは、1791年第1回目のロンドン滞在中、デュセックに借りたブロードウッドのピアノに感心し、その後、イギリス式のピアノに開眼。3曲の《イギリスソナタ》を作曲します。また、ハイドンのロ短調のソナタと同様、シュトゥルム・ウント・ドランク「疾風怒濤」スタイルのモーツァルトのイ短調のソナタは、パリで出会ったイギリス式のピアノに感化された影響を感じさせます。ブロードウッド・ピアノの響きも共にお楽しみください。
〔第2回公演報告〕
シリーズ第2回の作曲家ゲストは、モーツァルトと双璧をなす古典派の巨匠、ハイドン。モーツァルトとハイドンの親密な関係を堪能する夜でした。
使用したフォルテピアノは、老ハイドンがロンドンで出会ったイギリス式アクション、J.ブロードウッドのピアノを深町研太さんがコピーしたもの。ダイナミックなサウンドを聴かせてくれました。
ハイドンの作品に影響を受けたモーツァルトのK.280のソナタ、ハイドンがロンドンで作曲した3つの大ソナタからハ長調のソナタ。また後半は「シュトゥルム・ウント・ドランク」に焦点をあて、モーツァルトとハイドンの嵐のような激しさをもつ作品をお届けしました。
シリーズ第2回は《パパ・ハイドン》を慕う、お客さまに大勢お集りいただき、大賑わいの『モーツァルトのクラヴィーアのある部屋』となりました。
〔当日のアンケートより〕
・コンサートホールやリサイタルホールでは聞いたことがありますが、近江楽堂は、初めてです。室内楽的雰囲気で、小倉さんの話を聞きながら、楽しめました。後方からでしたので指使いがよくわかりました。
・精力的で多彩な演奏活動と録音に敬意を表します。ピアノフォルテに英式とウィーン式があるとは知らず、今日の演奏を聴く限り、単に古楽というだけでなく、「ダイナミック」な英式で聴かねば本当の味は出ないものだと感じました。
・とっても楽しく聴かせていただきました。小倉さんの演奏はいつも生き生きしていて、音1つ1つがキラキラ輝いています。CDもよく聴かせてもらってファンです。今日の新しい楽器のお話もいろんな事がわかって演奏をきくのがさらに楽しくなりました。
・子供の頃にSPレコードですり切れるほど聴き惚れたK310が白眉であった。クラヴサンで新たな発見があった。
・毎回素晴らしい演奏会で何日も前から楽しみにしております。演奏はもちろんですが、作曲家や曲目の解説はとてもありがたいと思います。
・モーツァルトのイ短調も、ワルターで弾かれると音楽が楽器を追い越してしまった感じがするけれど、ブロードウッドで弾かれるとなんと激しく、しっくりとハマることか。作品と楽器の双方から霊感を得て飛翔する演奏者のファンタジー。作曲家、楽器、作品と奏者の鮮やかなコラボレーションが聴けた。こういうのを聴いてしまうと、モダンでおっかなびっくり弾くハイドンやモーツァルトがますます聴けなくなるな・・・
第2回公演の使用楽器:Klavier made by Kenta Fukamatti after John Broadwood (ca.1802)
《第3回》
2012年7月31日(火)午後7時開演(開場6:30)
近江楽堂
《第3回》公演は終了しました!
〔ゲスト作曲家〕J.C.バッハ Johann Christian Bach (1735-1782)
小倉 貴久子(クラヴィーア)・重岡 麻衣(クラヴィーア)
J.C.バッハ:
クラヴィーアソナタ ト長調 Op.17-4/四手のためのソナタイ長調 Op.18-5
モーツァルト:
アレグロ 変ロ長調 K.3/四手のためのソナタ ハ長調 K.19d/クラヴィーアソナタ 変ロ長調 K.333/四手のためのソナタ ヘ長調 K.497
(写真はゲネプロの様子)
〔コンサートの聴きどころ〕第3回:J.C.バッハ
モーツァルトが8歳の頃、訪れたロンドンでJ.S.バッハの末息子、クリスティアン・バッハの膝に乗せてもらい交代でクラヴィーアを弾いたり、また即興で連弾をしたりと、親しく交際したというエピソードが伝えられています。モーツァルトのロンドン滞在中に書かれた「四手のためのソナタ」ハ長調 K.19dは、そんなふたりの打ち解けた雰囲気を感じさせる楽しい曲です。クリスティアン・バッハの音楽から大きな影響を受けたモーツァルト。彼の流麗で気品高く、そして親しみ易い作風をモーツァルトは愛したのでした。1782年に彼の訃報を聞いたモーツァルトは、「音楽界にとっての損失...」と心の師の死を悲しみました。演奏されることの少ないクリスティアン・バッハの「四手のためのソナタ」と、モーツァルトの「四手のためのソナタ」ヘ長調は、時にシンフォニーの書法を思わせるような充実した芸術作品です。
〔第3回公演報告〕
シリーズ第3回に迎えたゲストは、モーツァルトに最も影響を与えた作曲家、J.C.バッハ。ギャラントでエレガント、そして何より、グラツィオーソ、優しさあふれるクリスティアン・バッハの音楽は、確かにモーツァルトの音楽と基本的なところでつがなりあっていました!
モーツァルトが幼少時に訪れたロンドンで、クリスティアン・バッハの膝に上に乗せてもらってクラヴィーアの演奏を楽しんだ、という逸話から、今回は両者の連弾作品を取り上げました。
連弾相手は、小倉貴久子が芸大で一番最初に教えた、今はドイツ在住の重岡 麻衣さん。
常に笑顔でいるJ.C.バッハの音楽のような楽しい演奏会となりました。
第3回公演の使用楽器:Klavier made by Chris Maene after Anton Walter (1795)