小倉貴久子の《モーツァルトのクラヴィーアのある部屋》

*現在進行中!シリーズコンサート(第12チクルス:第37回、第38回、第39回)

《モーツァルトのクラヴィーアのある部屋》には毎回、モーツァルトと関わりのある作曲家等をひとりずつゲストとして迎えます。 モーツァルトとゲスト作曲家のクラヴィーアのソロ作品、またピリオド楽器奏者と共にお届けする室内楽、連弾、歌曲などなど、お話を交えながらのコンサートです。 18世紀にタイムスリップしたかのようなひととき、《モーツァルトのクラヴィーアのある部屋》にみなさまをご案内いたします!

《第37回》

2019年5月2日(木)午後7時開演(開場6:30)

近江楽堂

《第37回》公演は終了しました! 

〔ゲスト作曲家〕G.Ch.ヴァーゲンザイル Georg Christoph Wagenseil [1715-1777]

小倉 貴久子(クラヴィーア)・廣海 史帆(ヴァイオリン)

G.Ch.ヴァーゲンザイル:

ヴァイオリン伴奏つきクラヴィーアソナタ ハ長調 作品2-3

ヴァイオリン伴奏つきクラヴィーアソナタ 変ロ長調 作品2-5

コンチェルト イ長調 WV330

 

モーツァルト:

小品 ト長調 K.15y

ヴァイオリン伴奏つきクラヴィーアソナタ ト長調 K.9

オランダの歌「ヴィレム・ファン・ナッサウ」による7つの変奏曲 ニ長調 K.25

ヴァイオリンソナタ 変ロ長調 K.378

〔コンサートの聴きどころ〕第37回:G.Ch.ヴァーゲンザイル

 ウィーンに生まれ宮廷との深い関わりをもち続け、若い頃は宗教曲や舞台作品を書き、後年はクラヴィーアのヴィルトゥオーゾとしても名声を博したヴァーゲンザイル。膨大な数の器楽作品は、当時の様々な形式を取り入れた名曲揃い。また新しい装飾法や形式を追求し、ヨーロッパ各地で人気の音楽家でした。〈ナンネルの楽譜帳〉には彼の作品が含まれていて、そこに「5歳になる3日前、夜9時から9時半の間に習得」とレオポルトのメモが記されています。その後もコンチェルトを研究するなどモーツァルト父子はヴァーゲンザイルを高く評価していました。

 幼いヴォルフガングは、当時流行っていた「ヴァイオリン伴奏付きクラヴィーアソナタ」を作曲。ヴァーゲンザイルのこのジャンルの作品は、デュオソナタの形式になる前の過渡的形式としてではなく、優雅で華やかな宮廷の香りさえ感じさせる、ひとつの素晴らしい音楽のスタイルであることを私たちに伝えてくれます。

〔第37回公演報告〕

モーツァルトの子供時代、ウィーンの宮廷でもっとも権威のある作曲家として君臨していたヴァーゲンザイルが第37回のゲスト作曲家でした。モーツァルトは幼少期、ヴァイオリンの伴奏付きのクラヴィーアソナタを数多く作曲していましたが、その雛形となったのがヴァーゲンザイルの作品たちでした。6歳のモーツァルトがウィーン宮廷に招かれ演奏したのもヴァーゲンザイルのコンチェルト。モーツァルトのソナタと交互に聴いているうちに、さながら王侯貴族の気分になられたお客さんもいらしたことでしょう。

廣海史帆さんの美しいヴァイオリンの音色がフォルテピアノと響和。躍動感あふれる明るさに近江楽堂が幸せオーラに包まれました。

読売新聞 2019年5月16日(木)夕刊 Evening Entertainment

 小倉貴久子の〈モーツァルトのクラヴィーアのある部屋〉終楽章 ふわり疾駆

 モーツァルト8歳の年に出版されたト長調ソナタ(K.9)。たわいない音楽ながらも、小倉貴久子の指先は、そこに跳ねまわるような生命と意外なほど複雑なニュアンスを与えてゆく。

 2012年に始まった「モーツァルトのクラヴィーアのある部屋」は、モーツァルトの作品を、ゆかりのある作曲家と並べて聴かせる試みだ。第37回となる今回はウィーンの宮廷作曲家ヴァーゲンザイルとのカップリング。

 なによりテンポ感が傑出している。決して機械的という意味ではなく、アスリートの身体の芯がぶれないように、基本テンポが揺らがない。だからミリ単位の速度変化にドラマティックな意味が付されることになる。あらゆる旋律に方向性とキャラクターがあるのも美点だろう。何気ない音の連なりが、ひどく慌てたり、悲しんだりするのだ。

 10歳の年に書かれた変奏曲(K.25)や、ヴァイオリン(廣海史帆)を伴ったヴァーゲンザイル作品のように、一見、平穏な音楽であっても、主題が戻ってくる際のほんの少しの「間」がチャーミングだったりするから、まったく油断がならない。

 当夜最後に置かれたのはヴァイオリン・ソナタ変ロ長調(K.378)。初期作品ばかりの中にあって、作曲者25歳の年の本作はまるでロマン派のような威厳を感じさせて面白かったのだが、終楽章の演奏はその重さをふわりと脱ぎ捨てて疾駆しはじめた。

 そう、彼女の演奏は常に、終楽章がなんとも素敵だ。そのとてつもない体感速度は、「まじめな」構築などあっさりとご破算にして、すべてを笑いとばしてしまう。まさにモーツァルト的といったら誉めすぎだろうか。(音楽評論家 沼野雄司氏)

2日、初台・近江楽堂。

第37回公演の使用楽器:Klavier made by Chris Maene after Anton Walter [1795]


《第38回》

2019年7月31日(水)午後7時開演(開場6:30)

近江楽堂

《第38回》公演は終了しました! 

〔ゲスト作曲家〕C.M.v.ヴェーバー Carl Maria von Weber [1786-1826]

小倉 貴久子(クラヴィーア)・満江 菜穂子(クラリネット)

C.M.v.ヴェーバー:

クラリネットとクラヴィーアのための変奏曲 変ロ長調 作品33

協奏的大二重奏曲 変ホ長調 作品48

「舞踏への勧誘」変ニ長調 作品65

 

モーツァルト:

小品 変ロ長調 K.15aa

アレグロ 変ロ長調 K.400

「クラリネット五重奏曲 K.581終楽章」の主題による変奏曲 イ長調 K.Anh.137

クラリネット五重奏曲 K.581(大ソナタとして1809年に出版されたクラリネットとクラヴィーア編曲版)

*写真はゲネプロの様子

〔コンサートの聴きどころ〕第38回:C.M.v.ヴェーバー

 大作曲家ヴェーバーの父とモーツァルトの妻コンスタンツェの父は兄弟です。モーツァルトとヴェーバーは縁戚関係にあるわけですが、音楽上でも強い結びつきがありました。ドイツ語によるジングシュピール《後宮からの逃走》やオペラ《魔笛》は、モーツァルトが自国語を意識して書いたオペラで、その精神をヴェーバーが受け継ぎ《魔弾の射手》に結実します。18世紀末、楽器として発展し晩年のモーツァルトに愛されたクラリネット。ヴェーバーもこの新出の楽器のためにコンチェルトや五重奏曲を書きました。 

 ヴェーバーは華麗な技巧をもつピアニストで〈舞踏への勧誘〉は愛妻カロリーネに捧げた魅力的な作品。ウィンナワルツの手本ともなりました。ヴェーバーがクラヴィーアとクラリネットのために書いた作品と、曲中にコンスタンツェも登場するアレグロK.400など、モーツァルトとヴェーバーの関係に思いを馳せるロマンティックな夜となることでしょう。

〔第38回公演報告〕

満江菜穂子さんにはモーツァルト時代のB管クラリネットと、モーツァルトとの関連でしか登場しない楽器バセットクラリネット(オリジナルは存在しなく設計図を元に復元した楽器)をお持ちいただきました。華麗なクラリネットの技術の冴え渡るヴェーバーのクラヴィーアとの2作品。そして、クラヴィーアとの二重奏用に編曲されたモーツァルトのクラリネット五重奏曲は、グレーバーのフォルテピアノとの相性がとてもよく、原曲に引けを取らない充実した演奏になりました。

従兄弟同士の作曲家がクラリネットを縁に結ばれた当公演は、二人の演奏家にとっても愉しく、魅惑の瞬間がたくさんある心踊る一夜となりました。(写真はグレーバー・ピアノとバセットクラリネット)

第38回公演の使用楽器:Fortepiano made by Johann Georg Gröber [1820]


《第39回》

2019年9月27日(金)午後7時開演(開場6:30)

近江楽堂

《第39回》公演は終了しました!

〔ゲスト作曲家〕L.モーツァルト Leopold Mozart [1719-1787]

小倉 貴久子(クラヴィーア)・桐山 建志(ヴァイオリン)・花崎 薫(チェロ)

L.モーツァルト:

「ナンネルの楽譜帳」より

三重奏曲 第3番 イ長調

クラヴィーアソナタ 第1番 へ長調

 

W.A.モーツァルト:

小品 ニ長調 K.15bb

三重奏曲 ト長調 K.496

三重奏曲 ト長調 K.564

〔コンサートの聴きどころ〕第39回:L.モーツァルト

 W.A.モーツァルトの父として、《ヴァイオリン奏法》の著者として知られるレオポルト・モーツァルトは豊かな機知と知恵の持ち主で、ザルツブルク宮廷礼拝堂楽団随一の知識人でした。1757年に宮廷作曲家に任命され、63年副楽長に昇進。演奏と作曲のピークを迎える頃に、天啓を受けるがごとく奇跡の息子の教育にその全生涯を捧げるようになります。71年以降作曲活動は終止し、息子ヴォルフガングの教育者、興行主、マネージャー役に徹しヨーロッパ中を巡り歩きます。幼少期のヴォルフガングの自筆譜には様々な形での父の筆跡が見られます。天才音楽家モーツァルト誕生は、レオポルトの音楽家としての知識を存分に生かしたエリート教育なくしてはありえませんでした。

 生誕300年を迎えるレオポルトのトリオとソナタは、そんな偉大な父を感じさせる作品です。モーツァルトの心踊るトリオと共に、父と子の愛の軌跡を追想しながら近江楽堂での本シリーズを締めくくります。

〔第39回公演報告〕

近江楽堂におけるシリーズの最終公演の作曲家ゲストには、父レオポルトを迎えました。レオポルトの作品とヴォルフガングの作品を並べることにより、形式・楽想にただならぬ共通点を随所に聴くことができました。息子の教育に賭けるため、作曲の筆を若いうちに折ったレオポルトですが、その見識眼に敬意を表するとともに、作曲家としても一流の腕をもっていたことを認識する晩になりました。ヴォルフガングの作品からは、充実の三重奏曲を2曲(K.496とK.564)をお届けしました。

共演は、7年半前の当シリーズ第1回に出演してくれたヴァイオリンの桐山建志さんとチェロの花崎薫さん。近江楽堂でのシリーズ最終回を華々しく終えることができました。

第39回公演の使用楽器:Klavier made by Chris Maene after Anton Walter [1795]


会場/近江楽堂

(京王新線「初台」駅下車、オペラシティ方面出口3分)

〒163-1407 東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティ3階

Tel. 03-5353-6937(近江楽堂・松木アートオフィス)

全席自由:一回券4,000円(学生2,000円)

三回セット券(第37回〜第39回):10,000円(「メヌエット・デア・フリューゲル」及び「近江楽堂・松木アートオフィス」でのみ取扱い)

後援/日本モーツァルト協会・日本モーツァルト愛好会

一般社団法人 全日本ピアノ指導者協会・東京藝術大学音楽学部同声会

協力:KiKla

【チケット発売・お問い合せ】

・メヌエット・デア・フリューゲル(主催)Tel.048-688-4921 mdf-ks@piano.zaq.jp

・近江楽堂・松木アートオフィス Tel.03-5353-6937

【チケット発売】

・東京オペラシティチケットセンター Tel.03-5353-9999

・イープラス e+

・当日券の有無についてはお問い合せの上ご来場ください。

・未就学児の入場はご遠慮ください。

・都合により出演者、曲目が変更になる場合がございます。予めご了承ください。

・楽器のコンディションを保つため、夏場でも会場内が冷える可能性がありますので、羽織ものをご準備(持参)ください。 

 

[東京オペラシティ 交通のご案内]

●京王新線〈都営地下鉄新宿線相互乗入れ〉初台駅東口・・・徒歩5分以内

●小田急線 参宮橋・・・徒歩約14分

●都営地下鉄大江戸線 西新宿五丁目駅A2出口・・・徒歩約17分

●渋谷駅西口よりバス・・・約20分

 京王バス〈渋64〉:東京オペラシティ南または東京オペラシティ下車

 京王バス〈渋61〉〈渋63〉〈渋66〉/都営バス〈渋66〉:東京オペラシティ南下車

*駐車場(B2)7:00~23:30 30分300円

「モーツァルトのクラヴィーアのある部屋」クーポン券について

小倉貴久子の『モーツァルトのクラヴィーアのある部屋』の

CDプレゼント・クーポン券を6枚集めると、小倉貴久子演奏のお好きなCD1枚*をプレゼント!

クーポン券は、毎回のプログラム冊子の裏表紙左下隅に印刷されています。

クーポン券を切り取って所定の台紙に6枚貼ったらコンサート会場CD販売デスクへお持ちください。

郵送でもお申し込みいただけます。クーポン券は回が連続していなくても可。同一回複数枚は不可。

万が一、クーポン券を紛失された場合は無効となります。またクーポン券の再発行は致しかねます。

当シリーズは第40回での終了を予定しておりますが、当シリーズが終了した後は、新シリーズに引き継がれます。

有効期限はありません。クーポン券台紙はコンサート会場にて配布しております。

現在販売中のディスクの中からお好きなものをお選びいただけます。ただし2枚組は除きます。